精神障害者と健常者の犯罪率比較 殺人や放火などの凶悪犯罪で驚きの結果に!

精神障害者による事件が報道されるたびに、その犯罪率や危険性について関心が高まります。精神障害者の犯罪は健常者よりも多いという説も逆に少ないという説もありますが、いずれにしても勝手なイメージを抱いてしまうのは危険でしょう。

無意味な差別心や恐怖心、嫌悪感を持たないためにも、事実は事実として正確に知ることが必要です。

ここでは公的機関の公開データにもとづき、健常者と精神障害者の犯罪率を比較してみます。

参照

  • 平成30年版 犯罪白書 法務省
  • 平成30年版 障害者白書 内閣府
  • 人口推計(2018年(平成30年)10月1日現在)総務省統計局

精神障害者の犯罪率

いくつかの犯罪の種類(窃盗や殺人など)について、健常者と精神障害者の犯罪率を比較します。

いずれも10万人あたりの検挙人数で表しています。

ここでは便宜上「健常者」と記載としていますが、正確には「精神障害者も含んだすべての人」のことです。なので健常者の犯罪率の分母は総人口、分子は総検挙人数となります。そして精神障害者の犯罪率の分母は精神障害者数、分子は精神障害者の検挙人数としています。

また、ここでいう精神障害者は次の定義となります。

『「精神障害者」(統合失調症,精神作用物質による急性中毒若しくはその依存症,知的障害,精神病質又はその他の精神疾患を有する者をいい,精神保健指定医の診断により医療及び保護の対象となる者に限る。)及び「精神障害の疑いのある者」(精神保健福祉法23条の規定による都道府県知事への通報の対象となる者のうち,精神障害者以外の者)』(平成30年版 犯罪白書)

知的障害者も含んでいることに注意してください。

なお、データの参照が複数(内閣府、法務省、総務省)であるため、多少実態との誤差がある可能性があります。

刑法犯

まず、刑法犯全体の比較をしてみましょう。

刑法犯(10万人あたりの検挙人数)
180
170.04人
65.12人
90
0 健常者 精神障害者

圧倒的に健常者のほうが多いことが分かります。刑法犯全体における精神障害者の犯罪率は健常者の40%にも満たないのですね。このデータからは精神障害者の犯罪率はとても低いと言えるでしょう。

窃盗

次に、犯罪の中でも件数の一番多い窃盗を比較してみます。

窃盗(10万人あたりの検挙人数)
90
86.39人
23.01人
45
0 健常者 精神障害者

こちらもダントツで健常者のほうが高いです。窃盗では精神障害者は健常者の4分の1の犯罪率にしかなりません。

なお、窃盗関連(窃盗と専有離脱物横領)の検挙人数はすべての犯罪のうち6割近くを占めます。

すべての犯罪のうち窃盗の割合

すべての犯罪のうち窃盗の割合

強制性交等・強制わいせつ

強制性交等・強制わいせつ(10万人あたりの検挙人数)
3
2.96人
0.82人
1.5
0 健常者 精神障害者

これも健常者のほうが多いです。強制性交等・強制わいせつでは精神障害者は健常者の3割弱の犯罪率となります。

詐欺

詐欺(10万人あたりの検挙人数)
8
7.85人
2.96人
4
0 健常者 精神障害者

詐欺でも精神障害者は健常者の40%未満の犯罪率という結果になりました。

傷害・暴行

傷害・暴行(10万人あたりの検挙人数)
38
36.91人
16.12人
19
0 健常者 精神障害者

傷害・暴行も健常者のほうが精神障害者の2倍以上高いです。

脅迫

脅迫(10万人あたりの検挙人数)
2.4
2.22人
1.74人
1.2
0 健常者 精神障害者

こちらはかなり差が縮まりました。しかし、それでも脅迫における精神障害者の犯罪率は健常者の8割未満に収まっています。

強盗

強盗(人口10万人あたりの検挙人数)
1.4
1.35人
1.28人
0.7
0 健常者 精神障害者

こちらはさらに差が縮まっています。ほとんど変わりませんが、やはり強盗でも健常者のほうが犯罪率が高いです。

殺人

そして殺人の比較です。驚きの結果ですね。

殺人(人口10万人あたりの検挙人数)
2.4
0.69人
2.34人
1.2
0 健常者 精神障害者

殺人では健常者と精神障害者の犯罪率がこれまでの結果とそっくり入れ替わっています。なんと約3.4倍も精神障害者のほうが殺人の犯罪率が高いという結果になりました。

放火

そして最後に放火ですが、こちらはもっと顕著です。

放火(人口10万人あたりの検挙人数)
2.2
0.46人
2.16人
1.1
0 健常者 精神障害者

放火では精神障害者のほうが健常者よりも4.7倍も高い犯罪率となってしまいました。

精神障害者の犯罪率 まとめ

健常者と精神障害者の犯罪率の違いを具体的な犯罪の種類ごとに見てきました。

刑法犯全体を見た場合、圧倒的に精神障害者の犯罪率は低いです。件数の多い窃盗をはじめ、性犯罪、知能犯罪の一つである詐欺、粗暴犯罪である傷害や暴行、脅迫などでも健常者のほうが高い犯罪率になります。

しかし、凶悪犯罪に分類される「殺人」と「放火」については、突出して精神障害者のほうが高いという結果となってしまいました。

殺人・放火などの凶悪犯罪とその他の犯罪で、健常者と精神障害者の傾向がここまで逆になるなんて驚きですね。

なお、30名を超える死者を出した京アニ放火大量殺人事件も、犯人は精神障害者とのことです。

しかし、凶悪犯罪は絶対数がそもそも少ないため、過剰に反応するのはよくありません。

事実を正しく把握し、その上でさまざまな境遇の人を理解して、そして社会のあり方を考えることが暮らしやすい世の中を作ることにつながるのではないでしょうか。

2 COMMENTS

匿名

殺人事件に精神障害者が多いとしたデータは間違いで人を殺したあとに健常者が精神を患ったケース殆どだと警察署のデータにはあります。

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匿名

健常者の数字を総検挙人数(障害者含む)で算出されてますが、分母分子から障害者の数字を差し引いた方が適切ではないでしょうか?

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